本研究では、既存資料(中長期ロードマップ・戦略プラン等)で示されたシナリオを踏まえつつ、後述の技術マップで整理した廃炉に寄与可能な地盤工学系技術(委員会参加各機関より情報提供)、並びに超重泥水等の研究開発中の地盤工学系新技術を取り入れた廃炉シナリオについて、実効性・実用性なども含めた検討を進めている。
シナリオ検討に先立ち、学会内での理解度の統一を図ると共に、既存の地盤工学技術の適用性を探るために求められている技術要件等を明らかにすることを目的として、既存の中長期ロードマップや戦略プランなどの関連資料を統一的な時系列に沿う形で包括的に整理した。
その上で、この結果を踏まえ、基本的なシナリオ素案として廃炉にいたるフローとして、廃炉までに必要な作業や内容を10の項目に区分・抽出した上で、時間的な経過を考慮しつつ、それぞれの項目同士の関連性を示す形で整理している。
この基本的なシナリオ素案は、既に作業が完了した内容を含む『事故発生後から廃炉までの全体の流れ』を示したもので、各作業項目(「プラント安定状態維持・管理」や「燃料デブリの取出し」など)の下位により詳細なシナリオが設定される。現在、この詳細なシナリオを整理中であり、上述の地盤工学系技術(既存・新規)はこの下位の詳細なシナリオ部分に適用されることとなる。
開発中の放射線遮蔽と遮水の両方の機能を有する高粘性泥水(超重泥水)には、燃料デブリ取出し時における圧力容器・格納容器やサプレッションチェンバの止水に際して、①不具合があっても漏出しにくい、②粘土を調整することで多少の漏出が生じても、冠水水位を高く維持しやすい、など有意な点があり、現在、この漏水防止を核とした燃料デブリ取出しシナリオの実現可能性について、関係各機関との協働を模索しつつ検討を進めている。