本講習会は、福島第一原子力発電所の廃止措置において、「現状から廃止措置までの長期間の地下水環境・作業環境の状況調査と将来予測」のために、原子力技術者と協働できる新しい地盤工学技術者の育成プログラムとして企画されたものである。
一般に地盤工学では、地下水は流量が問題になることが多いため、ダルシーの法則に従った地下水解析を教えている。この方法は、地盤を多孔質体と仮定し、全断面でどれだけの流量があるかを算定するため、透水係数というパラメータでその特性を表現したものである。しかし、実際には、地下水は土粒子の間隙を縫うように流れるため、透水係数から算定された流速(ダルシー流速)より、実際の流速(実流速)は早くなり、地盤の間隙率(有効間隙率)や動水勾配も影響すると考えられる。従って、地下水による汚染物質等の広がりを把握するためには、この実流速が重要となる。
本講習会は午前の座学と午後の実験からなる。座学では問題点の概要に加えて、現場ボーリング孔を用いた実験の目的と内容を説明する。実験では現場のボーリング孔を使用して、水理試験(スラグ試験、揚水試験)により現場の対象土層の透水係数を把握し、トレーサー試験により平均実流速を把握した。但し、今回の実験は、揚水により対象土層に動水勾配をつけた一種の加速試験であり、動水勾配や流速が場所により変化するため、測定結果からだけで実流速は評価せず、モデル解析を併用して結果の解釈を行った。
以上の講習を通じ、参加者は実際の計測における問題点とその解決策を把握し、今後の現場実測のあり方を理論と実験両面から学習した。